カテゴリー「ノンストップ。」の14件の投稿

2008年8月19日 (火曜日)

ノンストップ:浴室

 

っどぷん─…

 

狭い浴槽のなかに、

体をあおむけに「つ」の字に丸めて

全身を冷水のなかに

 

「埋める」

 

目をつぶる、

鼻の穴を指でつまむ。

 

全身に冷水がささる、

心地が良い。

 

寒い空気も、

熱い空気も、

痛い刺激も、

刺さる他人の視線も、

入り込んで浸食してく

他人の言葉も、

 

いまここの「世界」では

全部一時的に僕を避けていく気がする。

 

それもそのはず、

戸と壁で「浴室」をつくり、

四角い箱のなかに水をためて、

空気すら通さない「浴槽」、

 

の中に僕は居る。

 

言葉は入ってくるかもしれない、

この冷水の中に、

 

そして

僕のなかに。

 

 

だけど、それを除外すれば

僕は多分、自由だ。

 

僕は多分、敏感にならない。

傷つかない。

 

時間が経てば息こそ苦しくなるが、

僕にとって此処ほど

気持ちの良い場所はない。

 

 

ここから出たら、、、、

また「刺さる」色んなものに

ぶちあたる。

避けてとおれない。

寒気も、熱気も、

己の弱さからくる自責も、

ある意味「見えない」視線も、

罵声も、痛い刺激も、

 

あんな物に当たるくらいなら、

現実から遮断された、

 

 よくそうのなかに

  ずっといたい

 

 

ここは誰で

ぼくは何処。

ここは浴槽の中の水の中で、

ぼくは僕だ。

 

わすれたくとも

わすれない。

 

僕は今、

僕なりの「自由」な世界にいて、

願わくばずっとここにいて、

いつかは自分のプロフィールも

自分の居場所も、

自分の事全部忘れられたらとさえ

おもってる。

 

でも1秒後、もっと早いかな、

もしかしたら光くらいの速さ、

機械的な瞬発力で、

 

僕は僕に現実をみせる。

 

「僕はここで、僕は誰々。」

 

見せたくないことは確か、

でも無意識に自分に見せている。

 

 

それは

 

僕が「現実」に

少なからず未練を抱いているからか。

 

「自分を忘れる」という事は

事故的にしか行えないからか、

自己の力ではどうにも出来ない

仕組みだからか。

 

 

現実から遮断された場所で、

現実を考える。

 

 

結局現実からは逃げられない。

 

 

僕はとても深い悲しみと

自動的にうまれた諦めを持って、

ほぼ酸素不足からなる限界を

原動力に、

 

浴槽から「飛び起きた」。

 

 

呼吸は僕の体を生かすと同時に、

現実の匂いを僕の体に焼き付けた。

 

呼吸が出来る場所(浴室)と

呼吸の出来ない場所(浴槽)とで

 

 

 

どっちが僕にとっての幸せか

かんがえた。

 

 

 

浴槽の中にもう一度戻ること、

浴室から出てまた生活に戻ること、

 

 

 

僕は浴槽に還りたい。

 

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2008年8月16日 (土曜日)

暴風クリネックス

【暴風クリネックス】:ものがたり

 

クリネックス:ティッシュの名前

 

 

例えばネピア(ティッシュの名前)

殴り合いをしたら。

 

まるでのれんに腕押し。

 

手応えがない。

 

 

そこでお互い休戦し、

箱に戻ってかんがえます。

 

クリネックスは、身軽になって

敵(ネピア)からの攻撃を避けようと、

もともと二枚重ねで一枚というスタイル

を崩し、自分の身から一枚ティッシュを

はぎとり、

ただでさえヒラヒラと頼りないマイボディを

さらにヒラヒラすけすけにし、

体重をかるくして

瞬発力を鍛えました。

 

一方。

 

ネピアは頭を悩ませていました。

 

-クリネックス……

 

名前は違えど同じ「ティッシュ」

このまままた突撃してしまえば

クリネックスにまんまとやられてしまう。

 

このまま体当たりしても、

お互いからだの軽さは同じで、

どっちも飛ばされて終わるだろう。

 

ならば体重を重くして

身体を固くして、クリネックスの

骨をバッキバキにしてやるまでだ。

 

ネピアは、見てる人がいないのを

確認し、急いで

水たまりに向かってダッシュ。

 

ジャンプ。

 

不自然に飛んで、

無造作におちていく。

 

やがてネピアティッシュは

水面に静かに染みわたり。

 

思っていたとおりになれました。

 

 

水を最大限まで含んだネピアティッシュ。

おもさは、人間様とは比べようが

ないが、自分的には

とてもとても重い体重に

なれました。

 

ネピアティッシュは、

「ゾウさん並」と

呟き、急いで

クリネックスティッシュの元へ

ダッシュしました。

 

身体が重い。

きっとクリネックスからの

パンチを華麗にキャッチ。

カッコイイオレ。

きっとクリネックスの骨を

バッキバキにして、再起不能にしてやんだ。

 

いざ 対戦。

 

 

あれ、

 

…クリネックス、痩せた?

あれ、ものの何分かで

激痩せしてるぜ。

なんでなんだぜ。

 

クリネックスもネピアと

おなじ目でネピアをみていました。

 

敵に対する思いはおなじ、で、

それに備えた個々それぞれの格好。

 

クリネックスとネピアは、

しばらく微動だにせず

お互いをみていました。

 

おたがいは、

相手の思惑が読みとれません。

 

なぜ体重を減らしてきたクリネックス!

 

なぜ体重を増やしてきたネピア!

 

 

お互いアクションをおこさないまま

時間だけは過ぎていきます。

 

 

 

ビュオォォォォ

 

 

まえぶれもなく、暴風。

まえぶれもなく、無言のパンチ。

 

 

濡れた肌にあたる風は

まさに涼風。

ネピアは風を楽しみました。

 

 

一方。

 

 

1/2の体重をへらした

クリネックスは、抵抗も出来ないまま

見えないパンチにからだが

うばわれていきます。

 

なにこの無抵抗。

 

うわぁ 思ってたより力がでない。

 

風か、

風ね。

 

その発想はなかった。

 

 

ネピアティッシュ、おまえは

すごいんだなあ。

風が吹くことを想定して

身体をわざわざあんなにびしょびしょに

して重くしたんだろう?

風が吹くなんて、自分には

そんな発想は。

 

 

飛ばされながら、クリネックスは

そんな事をぼうっとした視界の中で

思った。

 

 

つぎ生まれるときは

ネピアみたいになろうかな。

 

クリネックスがそう思いながら、

半ば「クリネックスとして生きていく」

事を諦めてゆっくり目を瞑ったのは、

 

目の前に大きな川があったからで。

 

自分の今の体重じゃもはや

力もまともに出なくて。

 

 

 

このままとばされていくんだなあ。

 

 

  

 

飛ばされていったクリネックスに

ネピアが気付くのは、

風がやっと止んで

あたりがまた静かになった頃。

 

ネピアが戦いに勝ったことを

悟るのも、

またその頃。

 

 

 

じぶんの身体が乾いたら、

今度はじぶんのからだも

飛ばされていくことも気付かずに。

 

 

【暴風クリネックス】おわり。

 

おやすみ

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2008年7月 1日 (火曜日)

ものがたり:くすり指

僕は両手いっぱいの

水を地上に向けた顔面に

おもいきりかけた

 

目は覚めない

じゃあこれはやっぱり、

夢じゃないんだ。

 

確かにあった

 

確かに入ってた

 

僕はこの目でみたんだ

あんなに衝撃的なもの

見間違うはずがない

 

 

八月の最後。

あしたからもう九月だというのに

未だに太陽は勢力をよわめず

 

僕の肌は昔から色黒いが、

毎年この時期はさすがに

太陽がうらめしい

 

校庭が暑さを反射する。

蜃気楼をはさむ、

遠くにみえるゆらゆら揺れる

鉄棒はきっと熱さを吸収して

熱くて、熱くて、触れないだろう

 

さっきから蛇口から

水が勢いよくながれてる

 

僕は蛇口をしめた

そして、汗だか水道の水か

わからない顔中の水滴を

腕でぬぐった

 

冷や汗か。

 

 

僕のいま立ってる水道、

そこからちょっと歩いた所で、

僕はさっき夢を見た(実際

夢じゃなかったけど)

 

だって、夢だとしか思えない。

現実じゃないよ、こんなの。

 

僕がさっき夢をみたばしょ、

  ゴミ捨て場。

 

さがしものがあったわけじゃない。

なんとなく、嫌な予感がしたんだ。

このゴミ袋の真横を通った時。

 

嫌な予感は気付かないふりを

したほうがいい。

平和な日常をおくるにふさわしい、

ぼくがさっき痛感した教訓。

 

 

僕のさっきみた「夢」

 

単刀直入にいうなら、

ゴミ袋の中に大量のくすり指が

はいっていた。

 

人間のくすり指。

 

それも、きれいな女の人の

手に今までいたのであろう、

綺麗なくすり指ばかりだった。

一般のゴミ袋にはいってるような

紙くずのゴミの上に、

大量のくすり指。

  

当然のことながら、

指の切断部分は血でおおわれ、

季節は夏であるため、

鼻にとどくにおいは、

ツン、と異臭極まりない

 

 

不思議なことに僕は、

その異様な光景から

逃げ出すことも拒否反応が出ること

もなく、そこに居続けていた。

 

というか、うごけなかった。

目がはなせなかった。

 

これを切断した人(そもそも

「人」が切断したのだろうか)

はなんの目的で切断した?

 

なにか嫌な予感がする。

 

こんなに沢山の人から指を

奪って、

しかもこんな小学校のゴミ捨て場に、

だれに見つかるかわからない

ゴミ捨て場に、

 

もしかしたらここの小学校の

誰か小学生が

このゴミ袋をひらいて…

 

 

僕は息をのんだ。

目の前の沢山のくすり指。

このくすり指の「持ち主」は

今もちゃんと息をしているの

だろうか。

 

殺された?

 

強制的にくすり指を奪われた?

 

 

そもそも僕はこの指の山の

前にすわっていてもいいのか?

 

僕のまわりには

幸いにも誰もいないが、

 

この指の山を造りだした「犯人」は

僕じゃない事は僕だけがわかってる。

 

 

 

 

 

 

-『僕だけにしかわからない』

 

たとえばここでこの光景が

誰かに(僕以外の人)みつかって、

すべてを僕の予想通りに察知され、

たくさん質問をされ、

何を答えても疑いの眼差しでみられ…

 

 

  

目の前の景色がかわった。

僕は僕の目の色が

変わったのがわかった。

たぶん今の僕の目は尋常じゃない。

 

 

な く さ な き ゃ

 

この「夢」を無かった事にするんだ。

目の前の現実を無かった事に

するんだ。

 

この「指」を無かった事にするんだ。

目の前の指の山をー………

 

 

 

気付いたときには僕は

一心不乱にそのくすり指を

自分の身体の中に隠していた

 

 

 

くすり指を、たべた

 

 

ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、

いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、

ここのつ、じゅっこ、じゅういっこ

 

いつどのタイミングで

口のなか沢山にひろがる

血(指)の味を飲み込んで

体のなかに押し込んだか分からない。

 

もうちょっとだ

もうちょっとだ

 

つまんでは、口の中へ。

つまんでは、口の中へ。

つまんでは、口の中へ。

 

噛むことも今は忘れよう。

 

飲み込んでしまえば

 

僕の記憶の中からもきっと消える。

だって目に写らないから。

目に見えないなら、

未来の僕はきっと「暑さに

やられて幻覚をみた」と

勘違いしてくれるだろう。

未来の僕は、

僕の目の前の今のこの

光景を「幻覚」だと

 

「幻覚」だと

 

僕の肌の毛穴からは

今まで経験したことないような

汗がたくさん、たくさん、たくさん。

 

指(血)の味? 

ー……そうか、夏だから。

夏だから、

腐ってしまってるのかな、

この指の山は。

 

暑さから? 

頭がクラクラする。

きもちわるい。

きもちわるい。

 

 

 

 

ごちそうさま

 

これでもう大丈夫

 

 

さっきの僕の思った通り

 

もう「指の山」なんかない

 

ぼくがみたのは、

ぼくの「勘違い」

 

さっきの僕の予想どおりの

勘違い。

 

 

 

頭が絶えずクラクラするのは

この、うだるような暑さのせい

 

頭が絶えずクラクラするのは

この、うだるような暑さのせい

 

 

暑さのせい

 

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2008年3月20日 (木曜日)

偽日記:マッチ

僕と君しかいない理科室は、

僕と君が一言も喋らなければ

シーンとしていた。

こんなにも理科室は広かっただろうか。

外からはセミの鳴く声が聞こえてくる。

 

君は僕の真正面に座っている。

  

君は、燃えている小さな火を

目の前の細いろうそくにチョン、と

移して、それから、少し怯えながら

マッチ棒の先の炎をふっと消した。

火はフッと消えてから白い煙を出した。

 

火が消えてから少し経って、

君はふうっ、っとため息をついた。

 

僕は首をかしげる。

君は僕に気づいた。

 

「火が、こわいんだよね。」

 

「そうなんだ。」

 

「小さい頃、花火の火をぐっと

握っちゃって超熱い思いして、

それから火がちょっと怖いんだよね。」

 

「跡とか残ったの?手に。」

 

「うん、ほらここ」

 

君は左手を開いて、てのひらの

中心部分のすこし茶色っぽい赤に

なっている部分を、ここだよ、と

指で指した。

 

「ふうん、痛そうだね。」

 

「痛かったよ。」

 

 

・・・。

 

沈黙になってしまった。

僕は目の前にある、ろうそくに目を

移した。ろうそくはさっき見たときよりも

だいぶ小さくなって、半分くらいの

大きさになっていた。

 

ろうそくの足元には溶けた「ろう」が

たまっていた。

すこしテカテカしていた、

触ったらやわらかいのだろうか、

硬いのだろうか。

 

僕はろうそくの根元に手を伸ばして

ろう に触ろうとした。

君はすぐに僕の手をつかんだ。

「だめ!!!!」

 

君が僕の手をつかんでいる。

君の動いた衝撃でろうそくの火が消えた。

白い煙があがっている。

 

君は僕の手をつかんだまま僕をじっと

見て黙っている。

僕は君に手をつかまれた事に

ただただびっくりしてじっと君を

見ている。

 

・・・。

 

「・・・・ごめん。つい。」

君は僕の手をぱっと離した。

 

「ん、いや、別に大丈夫だけど、

どうしたのいきなり。」

 

「だって、今、

ろうそくの火を握ろうとした。」

 

君は目をきょろきょろさせながら

喋った。

 

「だから、か。ごめんね

心配させて。」

 

「別に、

心配なんかしてない。」

 

君は目線をあさっての方向に向けている。

・・・。

 

「そっか。ごめん。」

 

・・・。

 

ろうそくの横にはマッチ棒が三本

無造作に入っているマッチ箱が置いてある。

マッチ棒の箱はしまわれておらず、

中身のマッチ棒が見えてしまっている

状態だ。

 

僕はマッチの箱ごと持って立ち上がった。

君はすこしびっくりしている。

 

僕は理科のテーブルの横についている

水道の前に立って、

蛇口をひねって、マッチ棒が入ったままの

マッチ箱に、

流れでてくる水道水を流し込んだ。

 

マッチ箱はまもなくびしょびしょになった。

 

「ちょ なにやってるの?」

 

「君が火を怖がるから。」

 

 

・・・。

 

僕はびしょぬれのマッチ箱を

机の真ん中―・・・まだ白い煙が

たっているろうそくのよこにポンッと

置いてどかっと座った。

 

君は少しわらった。

 

それにつられてぼくも少し笑った。

 

数時間後、理科の先生に、

理科の教室を無断で使っていた事、

僕らがマッチ箱を使っていたことを

探り当てられ、

マッチ箱が(+マッチ棒)がびしょぬれに

なって使い物にならないことを

こっぴどく怒られた。

 

僕は後悔していない。

  

p.sマッチは、乾けばまた使えると思う。

 

 

おわり。

 

つくりばなしです。

そんな大胆なことはした事ないです。

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2008年1月 8日 (火曜日)

*summer TWO

君は時々、額の汗を腕でぬぐった。

私はそれを三階の教室の窓から

肘をついて見ていた。

人通りもまばらな道路の前、

校門の横の柵に寄りかかっている君。

 

君はあとどの位そこに立ってられる?

 

私の肘が乗っかっている机の上には

「好きです」の言葉がやけに目立つ

白い便せん。

名前は書いていない。

朝学校に来たら机の中に入っていた。

 

「好きです」と鉛筆で真ん中に

大きく書かれた便せん。

 

「放課後、校門の前で待っています。

良い返事を待っています。」

 

一方的な手紙だった。

 

名前も知らない人からもらった手紙。

これがラブレターか。

私はボーッとその「ラブレター」を見つめた。

 

校門の前でこの暑いなか汗を

かきながら数時間前からずっと立っている

あの彼がこの手紙の差出人??

 

彼は時々後ろを振り向いて昇降口を

見ている。

 

この手紙の差出人が君なら、

君は私を待っている?

 

 

はあ、  ため息がでた。

そろそろ結論をだしに彼の元まで

行かなければ、

彼は熱中症で倒れてしまうだろう。

 

昇降口まで向かうと、校門の前の

彼はちょうど私に気付いた。

目線をそらさず真っ直ぐに私を見る。

 

私はなるべく目を合わさなかった。

 

右手にはラブレターを持って、

左手で鞄の中を探った。

タオルを取り出してしっかりと左手で持つ。

 

靴を履いて、彼の元まで走った。

彼はさっきから一度も私から目を

そらさずにじっとみつめている。

 

彼まで1メートル、

彼まで30センチ、

彼まで10センチ、

 

少し背の高い彼を上目づかいで

彼の唇の位置をすばやく確認した。

 

ツマサキ立ち、

 

 

 

彼まで0センチ。

 

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2008年1月 3日 (木曜日)

*summer

_____________ 

【第一回 数学I 確認テスト】

名前_______

(1)2(x+5)-4=

_____________

 

私は昨日勉強してこなかった。

確認テストがある、と昨日補習の

先生が言っていたのは覚えている。

 

この確認テストさえ無事に終えれば

このくそ暑い中行われる

生徒1人(私)対先生(数学)の

補習は終わる。

だがしかし、私は昨日家に帰っても

勉強をしなかった。このテストを無事に

終わらせなければ補修が延長に

なってしまう事もちゃんと分かっていた。

しかし、

私は勉強をして来なかった。

もう無気力なのである。

気持ちは焦っているが、身体がそれに

ついてこないのである。

 

私は確認テストの用紙を目の前に、

シャーペンを左手で持ちながら

左側の窓の外を眺めていた。

 

たった一問なのに、

たったこれだけの問題なのに、

全く分からないのである。

全く手のつけようがないのである。

 

私はまたチラリと目線を下に、

テスト用紙を見た。

 

-とりあえず、名前だけでも書くか。

 

_____________ 

【第一回 数学I 確認テスト】

名前 高橋狩子(たかはし かりこ)

(1)2(x+5)-4=

_____________

 

さて、この問題をどうしよう。

解けない、まったく分からない。

この状況をどうすればいいのだろう。

 

空白の席がならぶなか、ぽつんと

真ん中の一つの席に、私が座っている。

目の前の教卓には補習の先生が

腕を組んでこちらをじっと見つめている。

お前はその問題が解けないのか?と、

なにやってんだ、早く解けと、

言い足そうな目をしている。

 

解けるものならさっさと解いてるから。

 

目線を先生から、その後ろの緑の

黒板にうつした。昨日の補習の内容が

薄く残っている。先生は念入りに消した

つもりだろうが、薄くチョークの文字が

見える。

私は目を細めたり少し顔を前に突き出して

みたりしてなんとかそれを読み出して

みようとしてみた。

 

その行動を怪しく思った先生が、

背後の黒板に上半身だけ向けて

黒板を確認しだした。

クルクルと上下左右なめ回すように

念入りに黒板を見ている。

 

さすがに文字が薄く残ってるのが

バレたか…?と思ったところで

また先生は上半身をクルッと私に向けて

腕を組みなおした。

 

…バレて、ない。

 

私は再び薄い黒板の文字を

読みとろうとする。

 

先生は相変わらずこちらを

じーっと見ている。

  

 

…だめだ 解読できない。

 

あたしは はぁーっとため息を

して両腕を上につきだして

仰け反って伸びをしたあと、

 

「よし」

と気合いを入れて、シャーペンの

芯をカチカチと出した。

 

私は迷わず、たった一問の問題の

下に、シャーペンで文字を記した。

記し終え、ガタンといすから立ち上がり、

教卓に座っている先生の元へ向かった。

 

先生の前へ着き、

「終わりました。」と両手で解答用紙を

手渡した。

 

先生はそれを受け取り、

じっくりその用紙を見たあと、

「よし。」と言い、赤ペンで大きく

文字の上に丸をした。

 

あたしの口から安堵の息が漏れた。

 

あたしは急いで席に戻り、

シャーペンと消しゴムを

筆箱にしまい、それを鞄に押し込んで、

椅子を元に戻して足早にドアの方まで

向かい、クルッと教卓の方へ向き、

「ありがとうございましたっ!!!」と

元気よく頭を下げて言った。

廊下を走り急いで靴箱から靴をだし、

靴ひもも結ばず無理矢理足を突っ込み

走って校舎を後にした。

 

あたしは

補習から解放されたのだ!!!

 

提出された解答用紙を片手に

ボーッと見つめる先生。

_____________ 

【第一回 数学I 確認テスト】

名前 高橋狩子

(1)2(x+5)-4=

    学校辞めます!

_____________

 

たった一問の問題の下に

シャーペンで書き殴られた文字は

確かにそう書いてある。

 

先生はノートパソコンを教卓の中から

取り出し、開いて電源をつけた。

 

エクセルを開きフォルダを開く。

「3年3組 出席簿」の欄をクリックし、

縦に並べられた沢山の名前の羅列の

中から「高橋狩子」の文字を探しだし、

 

 

その名前の横に(退学)と打った。

 

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2007年12月30日 (日曜日)

*Pedicure

「だからさ、何度も言うけど

あたしは魔法とか使えないから。」

あたしは机の上の

ペディキュア(マニキュア)

手を伸ばして言った。

 

佐古はあぐらを掻いて、雑誌に載って

いる人物を切り抜きながらチラッと

こちらを見て言った。

「でも俺、昨日この目で見たよ。

お前が指一本でペンを

宙に浮かしてる所。まじ驚いたからね。」

 

驚いた、と言ってる割にはこちらの

目を見ようともせず手を動かしながら

淡々と喋る。

 

最近あたしの家にいつのまにか

居座ってるおさななじみの、佐古。

気づいた時からもう佐古はあたしの

家に住んでるみたいになってる。

この家に住んでる張本人の

1人暮らしのあたしでさえ

こいつが居座ってることを自然に感じる。

別に追い出そうとも思わない。

 

「で、どうなんだよ。」

少し間をおいて佐古があたしに聞いた。

 

昨日、佐古が少し外出してるときに

魔法を使ってしまった。

誰にも秘密の、私の魔法。

 

少し離れた場所に置いてあった

ペンを取るだけだった、

ただそれだけだから自ら動いてちゃんと

取ればよかったのに、気を抜いて

思わず人差し指を立てて

ペンを浮かせてしまった、

   魔法を使ってしまった。

 

小学生の頃にみんなの前で使って

みんなから敬遠されるようになってしまった。

みんなが見た直後のみんなの、

あの驚いたような、それでいて

少し引いたような目を、あたしは

忘れることができない。

 

それ以来絶対あたしは人前で

魔法をつかわないと決めたのだった。

 

佐古が外出中だという事をいいことに、

うっかり気を抜いて使ってしまった魔法、

そこを昨日ちょうど帰ってきた佐古に

見られてしまった。

 

「どうって?」

聞こえてなかったふりをして

聞き返した。

 

「いやだから…。何回も聞いてっけど

昨日のアレはなんだったんだって

言ってんの。

ペン浮かせてたじゃん、こうやって。」

と言いながら佐古は持ってた

雑誌とハサミとポイッと投げて

両手の人差し指を立てて同時に

宙で円を描いて

昨日のあたしの真似をした。

 

あたしは少し彼のその動作を見て

またすぐ足に視線を戻した。

足の二本の指の爪が真っ黒になっている。

三本目の爪にペディキュアのハケを

移した。

 

「あんた夢でもみたんじゃないの。

なにそのバカみたいな動作。」

あくまでもしらをきる。

第一 証拠がないのだ。

こいつが何を言おうともあたしは

しらをきればいい。

 

「バカみたいって-…!!

いい加減白状しろよ、正直に

『YES』って答えるだけじゃん、

三秒もかからないよ、だから、ホラっ」

佐古は目をキラキラさせて言った。

 

 

あたしは少し佐古の目を見つめた。

佐古の目は、明らかに興味本位で

知りたがってる目だ。

あたしはまた目線を足に戻した。

小指の爪をやっと塗りおえた。

 

-あたしがそうだと認めたところで、

あんたは興味本位でしかないくせに。

 

あたしはもう片方の足の親指の爪に

ハケを持ってきて塗り始める。

 

佐古は黙ってあたしを見つめてる。

足に目線をやっててもこっちを見てる

佐古が視界に入ってくる。

さっきまで彼が熱心に

切り取ってた雑誌のページとハサミは

投げ出されたままだ。

 

あまりにも佐古の目線がしつこいので

ゆっくりと丁寧にペディキュアのハケを

動かしながらあたしは聞いた。

 

「あたしが魔法を使ってたっていう

証拠は?」

あたしでも納得できる証拠を

佐古が挙げる事ができたら、

あたしは佐古に正直に事を話そうと

なんとなく心で決めた。

 

佐古は目線を左下に移して

しばらくそこを見つめたまま考え込んだ。

 

あたしは少し佐古に期待していた。

正直に魔法の事を話した所で

別にあたしの事を理解して

分かってくれそうにないような気がしてた

けど、【魔法】という存在が心に

とどまっているにはあたしにはもう重すぎる。

誰かに話すことでこれから

少しでも不自由を

感じることはなくなる気がした。

あたしは動かしていた手を止めて

佐古の顔をしばし見つめていた。

  

佐古はしばらく左下に目線を移して

真剣に考えこんでいたが、

諦めたような目の色をして

あたしの目をみて、

 

「…わかんない」

とつぶやいた。

 

 

もう、いいや。

 

あたしは足に目線をおろし、

残っていた

足の小指のペディキュアを

塗った。両足の爪を塗りおえた。

 

塗りおえた直後、 佐古は急に

何事もなかったような顔にもどり、

さっき投げた雑誌とハサミを拾い集めて

元切っていた線をまたハサミで

追っていた。

 

ハサミでページを切り抜きながら、

佐古はふっと思い出したように

「今日の晩ご飯なに??」

とあたしに問いかけた。

 

「知らない、

カレーとかになるんじゃない。」

あたしはペディキュアのふたを

回して閉めてコトッとテーブルに置いた。

 

「ふーん。」

佐古は熱心に線をハサミで追っている。

 

…また人前で魔法を使ってしまった。

今度は気づいてないようだが。

 

 

あたしはなにもすることがなくなった

両手をひざの上にペタンと置き、

黙って外に目をやった。

 

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2007年12月 7日 (金曜日)

*forget

ヨーカドーの五階の休憩所
 
私は荷物を隣に置いて
後ろの壁によりかかって
アイスのふたを開けた
 
目の前のいすには
おばあさんが2人座っていた
 
左側のおばあさんは眼鏡をかけて
文庫本を熱心に読んでいた
 
右側のおばあさんは
さっき買ったのであろう大量の荷物を
袋に入れて小分けしていた
 
私は手にもったアイスを食べながら
時々目の前のおばあさん達に
目線をやりつつボーッとしていた
 
しばらくすると目の前の
荷物を整理してた右側のおばあさんが
ひととおり荷物を整理し終えたようで、
荷物を両手に持って立ち上がった
 
左側のおばあさんは微動だにせずに
文庫本を読んでいる
 
 
整理してたおばあさんが
本を読んでるおばあさんに話しかけた
 
本を読んでるおばあさんは本を伏せて
整理してたおばあさんの話に
耳を傾けている
 
見ると、このおばあさんたちは
知り合いではなさそうだ。
 
整理してたおばあさんがある程度
話終えたあと、
本をよんでたおばあさんは
右腕の袖をめくって手首を見つめた
 
「三時半ですよ」
 
時計の時刻を教えたらしい。
 
「どうもありがとう」
 
たった一言の言葉だったが、
一文字一文字を強調して
気持ちを込めて言ったお礼だと
なんとなくすぐに分かった。
 
右側の荷物を整理してたおばあさんは
 
「それでは。」

 
とペコッと頭を下げて
重そうな荷物を両手に、
本を読んでたおばあさんに
背をむけて歩き出した
 
私の方向に顔を向けて歩き出す、
重たそうな荷物を抱えたおばあさんは
 
真顔であった
 
「それでは。」
 
とにこやかに言ったあと、
左側のおばあさんはすぐに
伏せてた本をクルッと戻して
元の体制に戻り本を読み始めた
 
 
私は2人の表情を交互に見ながら
右側のおばあさんが視界から
消えた後、
 
ようやく食べ終えたアイスの
空容器をスカートのすぐ横に置いて
折り曲げた両足を腕で抱いて
その上に顔をのせて目をつぶった
 
 
多分、
あの2人はこれから先二度と
出会わない
 
 
私は目を開けた
 
目の前のおばあさんは今もなお
真顔で本を読み続けている
 
私は目を閉じた
 
 
多分、
私もあの2人とこれから先二度と
出会えない
 
 

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2007年12月 2日 (日曜日)

*go to the heaven…

今日見た夢を

思い出そうとしたが

思い出せなかった。

 

底なし沼にずぶずぶと入っていく

みたいに

さっきまでちゃんとわかってたはずの

ことをピンポイントに

考えると思い出そうとすると

だんだんと思い出せなくなる。

そうやって色々な所を思い出そうとすると

どんどん消えていく。

 

ブロック崩しみたいだ。

 

よほど印象が強くないと、

夢はほとんど断片的で。

とても良い話だったのに。

とてもうれしい夢だったのに。

あたしがそれをどんどん欲に任せて

触れようとすると

 

忘れてしまう。

 

頭を抱えて思い出そうとする。

消えないで、消えないで

どうか 消えないで。

 

わたしに最終的に残った

今日の夢の思い出は

へんてこな景色だけだった。

 

しばらくするとわたしは

夢を見てる最中に声を出していた

事を思い出した。

わたしは寝ていた。だけど確かに

わたしの中に「声を出していた」ことが

わかった。

 

いつも近くで寝てる弟にも、

小学校の時の修学旅行の時も、友達に

 

「あんたの寝言が~…」って

 

言われてた。だから多分間違いない。

わたしは寝言を喋っていた。

思い出したら恥ずかしくなった。

わたしは確かに寝言を喋っていた。

 

頭を抱えていた手に気づいて

手を下ろす。

冬になった日本は、

この空間は、たしかに寒い。

肌を冷たい空気が刺す。

布団を被った、暖かい毛布が肌にさわる。

 

時計は6時半、いつも起きる時間より

1時間も早い。

 

くもり窓ガラス

晴れていても

曇っていても

雨が降っていても

同じ色。

いつも朝起きて窓をみると

カルピスの色をしている。

今日は雨が降っているのかな。

 

わたしは目をつぶる。

ツマサキはまだあたたかい。

 

もう一度寝よう

 

もう一度夢を見よう

 

願わくば1時間だけ、

今度は絶対忘れない夢を

 

わたしにください。

  

 

 

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2007年11月27日 (火曜日)

*next parade

僕は君を欲しがらない
欲しがったらいけないよ
僕は君を切った
うらぎった
 
久しくみない 君はファイル
久しく会った 透明ファイル
君は僕を見た?
僕は確かに君を見据えた
 
正面に座る 僕はまっすぐ線を引いた
祭りの途中 高鳴る胸は君を向いている
 
真後ろ 青いファイルは見えない
確かにいる 目を瞑ってるの 

僕のファイルは名前だけ 
止まることをしらない 僕らのパレード
君の胸の奥は 今もみえない
 
僕は君が欲しかった
君は今 僕をいらない?
君を見る 君は返事をしない
僕は呼んでない だから返事をしない
 
問いかける?
問いかけてくれない?
 
朝と夜 平行線なふたつの橋へ

僕と君は 返事をしない
疲れて登る ボールは向こう側へ

疲れて登る ボールは向こう側

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