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2007年12月 7日 (金曜日)

*forget

ヨーカドーの五階の休憩所
 
私は荷物を隣に置いて
後ろの壁によりかかって
アイスのふたを開けた
 
目の前のいすには
おばあさんが2人座っていた
 
左側のおばあさんは眼鏡をかけて
文庫本を熱心に読んでいた
 
右側のおばあさんは
さっき買ったのであろう大量の荷物を
袋に入れて小分けしていた
 
私は手にもったアイスを食べながら
時々目の前のおばあさん達に
目線をやりつつボーッとしていた
 
しばらくすると目の前の
荷物を整理してた右側のおばあさんが
ひととおり荷物を整理し終えたようで、
荷物を両手に持って立ち上がった
 
左側のおばあさんは微動だにせずに
文庫本を読んでいる
 
 
整理してたおばあさんが
本を読んでるおばあさんに話しかけた
 
本を読んでるおばあさんは本を伏せて
整理してたおばあさんの話に
耳を傾けている
 
見ると、このおばあさんたちは
知り合いではなさそうだ。
 
整理してたおばあさんがある程度
話終えたあと、
本をよんでたおばあさんは
右腕の袖をめくって手首を見つめた
 
「三時半ですよ」
 
時計の時刻を教えたらしい。
 
「どうもありがとう」
 
たった一言の言葉だったが、
一文字一文字を強調して
気持ちを込めて言ったお礼だと
なんとなくすぐに分かった。
 
右側の荷物を整理してたおばあさんは
 
「それでは。」

 
とペコッと頭を下げて
重そうな荷物を両手に、
本を読んでたおばあさんに
背をむけて歩き出した
 
私の方向に顔を向けて歩き出す、
重たそうな荷物を抱えたおばあさんは
 
真顔であった
 
「それでは。」
 
とにこやかに言ったあと、
左側のおばあさんはすぐに
伏せてた本をクルッと戻して
元の体制に戻り本を読み始めた
 
 
私は2人の表情を交互に見ながら
右側のおばあさんが視界から
消えた後、
 
ようやく食べ終えたアイスの
空容器をスカートのすぐ横に置いて
折り曲げた両足を腕で抱いて
その上に顔をのせて目をつぶった
 
 
多分、
あの2人はこれから先二度と
出会わない
 
 
私は目を開けた
 
目の前のおばあさんは今もなお
真顔で本を読み続けている
 
私は目を閉じた
 
 
多分、
私もあの2人とこれから先二度と
出会えない
 
 

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